建設業界で存在感を増すフリーランス―人手不足は外部人材で補うべき

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金田 侑万
執行役員/エグゼクティブコンサルタント
金田 侑万
文教大学卒業後、国内最大級のヘッドハンティング会社に新卒入社。大手不動産デベロッパーや建設会社等のクライアントを担当するヘッドハンターとして、技術職・専門職のヘッドハンティング業務に従事。 複数の社内表彰を受賞するなど、建設・不動産業界の採用支援において、豊富な実績を有する。 その後、弊社代表の高木と共に株式会社レガシーを創業。建築・内装施工における施工管理や不動産デベロッパーにおける用地仕入れ営業職など、採用難易度が非常に高いポジションのヘッドハンティングを得意としている。 埼玉県出身。

目次

少子高齢化の影響により、日本全体で人材不足が進む中、建設業界の人手不足は特に深刻化しています。「技術者を確保できない」「社員の高齢化が進んでいる」といった課題を抱える建設会社は少なくありません。一方で、建設業界では採用競争が激化しており、求人広告など従来型の採用手法だけでは十分な人材確保が難しい時代となっています。そうした中、近年注目を集めているのが、建設業界におけるフリーランス人材の活用です。施工管理や設計、積算といった専門職を中心に、経験豊富なフリーランスが即戦力として現場を支えるケースが増加しています。本記事では、データをもとに建設業界におけるフリーランス増加の実態と、その背景、活用事例、注意点について解説します。

建設業界の技術者不足は正社員ではカバーできない状況

建設業界における採用市場は、すでに競争過多のレッドオーシャンといえる状況にあります。実際、ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・パート除く)の有効求人倍率は7倍(2024年3月時点)を記録しており、全産業平均である0.96倍と比較しても、極めて高い水準にあります。この数値からも、建設業界がいかに深刻な人材不足に直面しているかが分かります。

中でも問題視されているのが、建設技術者数の大幅な減少です。2001年には約432万人が建設技術者として従事していましたが、2020年時点では約321万人まで減少しており、約100万人以上の人材が業界から失われている状況です。一方で、建設投資額に目を向けると、2001年と2020年を比較しても約60兆円とほぼ同水準で推移しています。つまり、工事の総量は変わっていないにもかかわらず、それを担う建設技術者だけが大幅に減少しているという、極めて歪な需給構造が生まれているのです。

この結果、限られた建設技術者を多くの建設会社が奪い合う構図となり、採用競争は年々激化しています。
データが示す通り、建設技術者は希少価値の高い存在となっており、技術者不足を正社員のみでカバーするのは困難な時代に突入しているといえるでしょう。

資料出所:総務省「労働力調査」、国土交通省「建設投資見通し」

建設業界におけるフリーランスと一人親方の違い

建設業界では「フリーランス」と「一人親方」という言葉が混同されがちですが、両者は契約形態や働き方の点で明確な違いがあります。

まず、一人親方とは、主に現場作業を担う職人が会社に雇用されず、個人事業主として元請・下請企業と請負契約を結び働く形態を指します。大工、鳶、左官、鉄筋工などの技能職が中心で、特定の企業から継続的に仕事を受けるケースも多く、実態としては特定現場への常駐や作業指示を受けることも少なくありません。そのため、契約内容や働き方によっては「偽装一人親方」と判断されるリスクがあり、企業側には慎重な対応が求められます。

一方、建設業界におけるフリーランスは、施工管理、設計、積算、CAD・BIM業務など、専門性の高い技術・知識を提供する職種が中心です。プロジェクト単位で業務委託契約を結び、成果物や業務範囲が明確に定義されている点が特徴です。業務の裁量はフリーランス側にあり、複数企業と同時に契約するケースも珍しくありません。

このように、一人親方は「現場作業の担い手」、フリーランスは「専門業務の外部パートナー」という位置づけであり、建設業界においては役割と契約設計を明確に区別することが重要です。

建設業界のフリーランス活用事例(職種別)

実際に建設業界でフリーランスが活躍している事例として、いくつかの職種ごとに具体的に見てみましょう。施工管理、設計、積算といった分野では、それぞれ以下のようにフリーランス人材が活用されています。

施工管理分野のフリーランス活用例

建設プロジェクトの現場監督である施工管理の分野では、経験豊富なフリーランス技術者が重宝されています。大規模プロジェクトが重なると各社とも現場を指揮できる人材が不足しがちですが、そこでフリーランスの施工管理技士に協力を依頼するケースがあります。例えば、トンネル工事や高層ビル建設など特定の工種に精通した施工管理のプロがフリーランスとして活躍し、「この分野なら○○さんに任せよう」と指名されることもあります。企業側はプロジェクト期間中だけ契約する形で即戦力を確保でき、フリーランス側も自身の専門スキルを発揮して高収入を得られるメリットがあります。特に有資格者(施工管理技士など)で現場経験が長いシニア層が、定年退職後に嘱託ではなくフリーランスとして現場監督を続ける例も増えています。こうしたベテランのフリーランス施工管理者は、安全管理や工程調整で的確な判断ができるため、人材不足に悩む建設現場を支える貴重な戦力となっています。

設計分野のフリーランス活用例

建築設計や意匠・構造設計の分野でも、フリーランスの活用が見られます。設計事務所やゼネコンの設計部門では、案件の繁忙期に社外のフリーランス設計士へ業務委託することがあります。例えば、建築士の有資格者が独立してフリーランスの建築家として活動し、複数の会社から設計図の作図や確認業務を受託するといった形態です。また、BIMやCADの高度なスキルを持つフリーランス技術者が、プロジェクト単位で図面作成やモデル構築を支援するケースもあります。企業にとっては必要な時に必要な分だけ専門スキルを借りられるため、人件費の効率化につながります。一方、フリーランスの設計士にとっても、様々なプロジェクトに携わることで経験の幅を広げられる利点があります。最近では在宅リモートで図面チェックを行うなど柔軟な働き方も可能になり、設計分野でもフリーランスが活躍しやすい環境が整いつつあります。

積算分野のフリーランス活用例

建設コストの見積もりを担当する積算の分野でもフリーランス人材が存在します。特に中小の建設会社や工務店では、専門の積算担当者を常時抱えるのが難しいため、フリーランスの積算士に業務委託するケースがあります。こうしたフリーランス積算士は、図面から数量を拾い出し工事費を算出するプロフェッショナルで、複数の企業から見積依頼を受けることも珍しくありません。例えば、大型案件の入札に際して社内に積算のノウハウが不足している場合、経験豊富なフリーの積算コンサルタントに一時的に協力を仰いで見積書を作成してもらうといった活用法があります。積算は建設プロジェクトの採算を左右する重要業務ですが、専門知識が要求されるため人材が限られます。その点でベテラン積算士のフリーランスは非常に貴重で、適正な工事価格の算出やコスト削減の提案など、企業の利益確保に貢献する役割を果たしています。企業にとっては高い専門性を持つ人材をプロジェクトベースで起用できるメリットがあり、フリーランス側も自身の知見を活かして複数社と取引することで収入源を分散できるという利点があります。

以上のように、建設業界では不足しがちな専門人材をフリーランスで補う動きが各職種で進んでいます。施工管理・設計・積算いずれの分野でも、経験豊富で即戦力となるフリーランスが現場を支え、企業側とフリーランス側の双方にメリットを生み出しているのが実情です。

建設業界でフリーランスを活用する際の注意点

建設業界でフリーランス人材を活用する場合、トラブルを防ぎ効果を最大化するためにいくつか注意すべきポイントがあります。フリーランス新法(2024年11月施行)など最新のルールも踏まえ、以下に主な留意点をまとめます。

契約条件の明示と書面化

業務内容・報酬・納期など契約条件は口頭ではなく書面やメールで明確に提示しましょう。フリーランス新法でも発注者に取引条件の明示義務が課されており、契約内容をはっきりさせることがトラブル防止の第一歩です。お互いの認識違いを防ぐため、業務範囲や成果物の要件も具体的に合意しておくことが重要です。

適正な報酬設定と期日払いの徹底

フリーランスに依頼する場合は、そのスキルと成果に見合った報酬を設定し、支払いは契約で定めた期日までに確実に行いましょう。フリーランス新法では発注者に報酬の支払期日を定め遵守する義務や不当な減額・支払拒否の禁止が規定されています。建設業界では下請代金支払遅延等防止法の対象外となる個人事業主も多いため、より意識的に迅速な支払いを心がけ、公正な取引関係を築くことが信頼確保につながります。

「偽装一人親方」の防止

フリーランスを実質的に従業員のように使役する偽装請負は法律違反となり得るため注意が必要です。例えば、勤務時間や勤務場所を発注者が細かく指示・管理したり、業務の拒否権がフリーランス側にないような場合は、形式上は業務委託でも実態は雇用と見なされるリスクがあります。その場合は労働法規が適用され残業代支払い義務等が生じる可能性もあります。発注側はフリーランスとはあくまで対等な事業者同士の関係であることを認識し、指揮命令系統や勤務拘束のあり方に十分配慮しましょう。少しでも雇用に近い実態があるなら早急に是正することが肝要です。

安全管理と労災保険の適用

建設現場でフリーランス(個人事業主)を起用する際は、従業員同様に安全配慮義務を持って接することが大切です。フリーランスである一人親方は労働者災害補償保険(労災)の強制適用を受けませんが、希望すれば特別加入制度で労災保険に加入できます。実際、建設業の一人親方の労災特別加入者数は平成30年度末時点で約59.5万人にも上ります。発注者としては、現場で働くフリーランスにもヘルメットや安全帯など必要な安全設備を支給・徹底し、万一に備えて労災保険特別加入の手続きを促すなど配慮しましょう。また、現場の危険情報やルールを事前に十分共有し、朝礼やKY活動(危険予知活動)にも可能な範囲で参加してもらうことが望ましいです。

技能・資格の確認と機密保持

フリーランスに専門業務を任せる際は、その人が当該業務に必要な資格や技能を有しているか事前に確認することも重要です。施工管理や設計では有資格者であることが法的要件となる場合もありますし、積算業務でも経験値が仕上がり精度に直結します。過去の実績や保有資格を確認し、必要に応じて機密保持契約(NDA)を結ぶなど信頼できる人材か見極めましょう。機密情報の扱いや成果物の知的財産権の帰属についても契約書で定めておけば、後々のトラブルを避けられます。

以上のポイントに留意しつつ、フリーランスと良好なパートナーシップを築くことができれば、建設業界の発注者・受注者双方にとって大きなメリットとなります。新しい法律の遵守や適切な契約管理を徹底することで、フリーランス人材の力を安心して最大限引き出すことが可能になるでしょう。

まとめ

建設業界におけるフリーランス人材の増加は、データが示す通り確かなトレンドです。深刻な人手不足と高齢化という課題に直面する中、経験豊富なプロ人材をフリーランスという形で柔軟に活用する動きは今後も続くと予想されます。実際、施工管理や設計、積算など様々な職種でフリーランスが現場を支え、その存在感は年々高まっています。

もちろん、フリーランス活用には契約や労務管理の面で注意点もありますが、適切に対応すれば企業にとって即戦力を得る有効な手段となります。重要なのは、フリーランスを対等なビジネスパートナーとして扱い、信頼関係に基づく協力体制を築くことです。その上で安全管理や法令順守を徹底すれば、安心して外部人材の力を借りることができるでしょう。

建設業界におけるフリーランスの活躍は、今後ますます拡大する可能性があります。企業側はその波をうまく捉えて優秀な人材確保に繋げるとともに、フリーランス側も自身のスキルを武器に活躍の場を広げていくことが期待されます。建設業界とフリーランス人材の共存モデルが確立されれば、人手不足の解消と生産性向上にも大きく寄与するでしょう。業界全体として信頼性の高い環境を整えつつ、フリーランスという新しい労働力を積極的に活用していくことが、これからの建設業界の発展につながると言えそうです。

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