少子高齢化の影響により、日本の労働市場では人材不足が深刻化していますが、建設業界における設計人材の不足は特に顕著です。「案件はあるが設計者が足りない」「主力設計者の高齢化が進んでいる」といった課題を抱える企業は少なくありません。
一方で、採用競争が激化する中、求人広告など従来型の採用手法では優秀な設計人材を確保することが難しくなっています。こうした状況を背景に、設計人材採用の新たな手法としてヘッドハンティングが注目されています。本記事では、設計人材におけるヘッドハンティングの有効性について解説します。
建設業界における設計人材ヘッドハンティング事情
日本の労働市場は少子高齢化の影響により、あらゆる業界で人材不足が深刻化しています。その中でも、建設業界の人手不足は特に顕著です。現場では「現場監督や施工管理技術者が足りない」「社員の高齢化が進んでいる」といった声が多く聞かれ、人材獲得競争は年々激しさを増しています。
こうした背景から、求人広告や転職サイトといった従来型の採用手法では、必要な人材を十分に確保することが難しい時代になりました。特に即戦力となる専門人材については、募集をかけても応募が集まらないケースが珍しくありません。その結果、近年は新たな採用手法として「ヘッドハンティング」が建設業界でも大きな注目を集めています。
実際に、建設業界の技術者不足はデータからも明らかです。建築・土木・測量といった分野では、有効求人倍率が他業界と比べて極めて高い水準で推移しており、慢性的な人手不足状態にあります。また、建設技術者数は長期的に減少傾向にある一方で、建設投資額は大きく落ち込んでおらず、業務量と人材数のバランスが大きく崩れています。
今後も技術者不足は続くと見込まれており、建設企業にとって人材確保は経営の根幹を左右する重要課題です。こうした状況下で、特に専門性の高い設計人材の採用においては、ヘッドハンティングの活用が現実的かつ有効な選択肢となっています。
設計技術者(意匠・構造・設備)の採用ニーズ増加とヘッドハンティング
建設業界の中でも、近年とりわけ採用ニーズが高まっているのが設計分野の技術者です。意匠設計、構造設計、設備設計といった各分野において、経験豊富な設計者の不足が顕在化しています。
公共事業や民間開発の活発化によりプロジェクト数は増加していますが、それに比例して設計業務を担う人材が確保できているとは言えません。図面作成、構造計算、設備計画といった高度な専門性を要する業務を担当できる人材が不足し、設計事務所や建設会社の負担は増す一方です。
実際、多くの建築設計事務所が慢性的な人材不足を感じており、特に設備設計分野では人手不足が深刻です。次いで意匠設計、構造設計と続き、どの分野においても十分な人材確保ができていないのが実情です。その結果、長時間労働が常態化したり、受注案件を制限せざるを得ない状況に追い込まれる企業も少なくありません。
また、設計職種においては世代構造の問題も無視できません。一級建築士などの有資格者は50代以上に偏っており、即戦力となる30代・40代のミドル層設計者は非常に貴重な存在です。若手育成も重要ではあるものの、短期的に戦力となる人材を確保するには、外部からの採用が不可欠です。
しかし、こうした設計技術者を求人広告や人材紹介会社経由で採用しようとしても、なかなか成果につながらないケースが多く見られます。特に即戦力クラスの設計者は市場にほとんど出てこないため、従来型の採用手法だけでは限界があるのです。
建設業界における構造的な人手不足
設計人材に関わらず、建設業界においては、ヘッドハンティングの活用は非常に増えてきています。その背景には、建設業界の異常ともいえる人材不足事情があります。ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は7倍(2024年3月時点)を記録しており、他業界(平均0.96倍)と比べても、極めて有効求人倍率が高い状態であるといえます。特に、設計人材を含む、建設技術者の減少は著しく、2001年には約432万人の建設技術者が従事していましたが、2020年時点では約321万人まで減少しています。一方で、建設投資額は2001年と2020年を比較すると、約60兆円と同水準です。つまり、建設投資額は変わらないが、建設技術者は100万人以上減少している状況です。いかに技術者不足が顕著であるか、データ上でも明確になっています。

2030年には、建設技術者が3.2万人不足するという試算も存在しており、設計・施工における技術者の育成・確保はゼネコン・サブコン、設計事務所にとって死活問題になることは間違いないでしょう。そして、若者離れが深刻になり、新卒採用の難易度が高い建設業界では、建設技術者の中途採用市場は極めて競争が激しいものとなっています。
優秀な設計者は転職市場に現れない──だからこそヘッドハンティングが有効
優秀な設計技術者ほど、転職市場に姿を現さない傾向があります。日々のプロジェクト業務に追われていたり、現職で一定の評価や待遇を得ていたりするため、自ら積極的に転職活動を行っていないケースが大半です。そのため、求人サイトや転職エージェントを通じた「待ち」の採用では、こうした優秀層にアプローチすることができません。転職市場に出ているのは、労働者全体の中でもごく一部に過ぎず、限られた候補者を多くの企業が奪い合う構図になっています。このような状況では、知名度や待遇面で優位に立つ大手企業であっても採用に苦戦しがちです。ましてや中小規模の設計事務所や建設会社にとっては、求人を出しても応募が集まらないという事態も珍しくありません。
そこで有効となるのが、設計者のヘッドハンティングです。ヘッドハンティングは、現在転職を考えていない潜在層の人材に対して、直接アプローチできる点が最大の特徴です。今は転職を意識していない設計者に対しても、自社の魅力や将来性、携われるプロジェクト内容を伝えることで、転職を検討するきっかけを提供できます。
また、転職市場に出てこない設計技術者であっても、「より専門性を発揮できる環境で働きたい」「今後のキャリアに不安がある」といった潜在的な思いを抱えていることは少なくありません。ヘッドハンターはこうした本音を丁寧に引き出し、企業と候補者双方にとって納得感のあるマッチングを実現します。優秀な設計者ほど引く手あまたであるからこそ、直接的かつ戦略的にアプローチできるヘッドハンティングは、設計人材採用において非常に有効な手法と言えるでしょう。
設計技術者のヘッドハンティング事例
ここで、設計技術者のヘッドハンティングに成功した具体的な事例をご紹介します。
ある中堅規模の建築設計事務所では、公共建築案件の受注が増加する一方で、設計者不足が深刻化していました。求人広告や人材紹介サービスを利用しても十分な応募が集まらず、事業拡大の足かせとなっていたため、ヘッドハンティングの導入を決断しました。担当したのは、建設・設計業界に精通した専門のヘッドハンターです。企業のニーズを丁寧にヒアリングした上で、同業界で実績を積んできた設計者をリストアップし、個別にアプローチを行いました。
その結果、準大手設計事務所で15年の実務経験を持つ、30代後半の一級建築士との面談が実現しました。この候補者は積極的に転職活動をしていたわけではありませんでしたが、「公共建築に携わりたい」という志向と企業の強みが合致し、年収アップを含む条件面でも折り合いがついたことで、採用に至りました。
この事例の成功要因は、以下の点に集約されます。
- 経験豊富な即戦力設計者を的確にリサーチできたこと
- 候補者のキャリア志向と企業ニーズを丁寧にすり合わせたこと
- 専門性を正しく理解した上で、説得力のある提案ができたこと
特に重要だったのは、ヘッドハンター自身が建設・設計業界に精通していた点です。業務内容や市場動向を深く理解しているからこそ、候補者からの信頼を得ることができ、企業側との調整もスムーズに進めることができました。
まとめ
建設業界における設計技術者の採用は、今後ますます難易度が高まると考えられます。優秀な人材ほど転職市場に現れにくく、従来の採用手法だけでは十分な成果を上げることが難しくなっています。
そのような環境下で、必要な人材に直接アプローチできる設計者のヘッドハンティングは、企業の人材戦略において極めて有効な手段です。特に意匠設計・構造設計・設備設計といった専門分野では、業界に精通したヘッドハンターの支援を受けることで、通常の採用活動では出会えない優秀な人材と巡り合う可能性が高まります。
採用難に直面している企業の採用担当者や経営者の方は、ぜひ一度、建設業界特化型のヘッドハンティング活用を検討してみてはいかがでしょうか。設計人材確保の新たな突破口となるはずです。
弊社は、建設業界特化のヘッドハンティングサービスを展開しています。
- 設計業界に精通したコンサルタント陣
- 設計業界における様々な人材との独自ネットワーク
- 設計業界特有の事情や時流を踏まえた採用戦略の支援
など、建設業界特化のヘッドハンティングだからこそ、ご提供できるサービスがあります。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。
※プロジェクト設計及びお見積りは無料です。












