少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少の一途をたどる日本では、多くの企業が人材不足に悩まされています。特に、建設業界や不動産業界では、2024年4月から残業規制が厳しくなったこともあり、人手不足の影響が大きくなっています。建設業界では施工管理、不動産業界では営業職の「引き抜き」が日常的に行われていることからも、人材の獲得競争がいかに激しいかが分かります。一方、昨今の中途採用市場には、若手・中堅層の優秀な人材は滅多に出てきません。各社、若手・中堅層の優秀な人材に対しては、転職しないように、待遇を上げたり、働き方を抜本的に改善したりと、離職防止策を徹底しているためです。求人広告に掲載して「待つ」という姿勢では、優秀な人材にリーチできなくなっているため、採用市場に出る前の人材にアプローチしていく手法「ヘッドハンティング」が注目を集めています。
また、引き抜きとヘッドハンティングは、転職や採用に関する用語として似たようなニュアンスを持っていますが、それぞれの意味には微妙な違いがあります。本記事では、引き抜きとヘッドハンティングの違いや、ヘッドハンティングはプロに依頼するべき理由を解説します。
ヘッドハンティングと引き抜き
引き抜きとは
引き抜きとは、同業他社や取引先に在籍している優秀な人材に、自社に転職することを直接促すことを指します。ヘッドハンティング会社等の第三者を介さず、採用担当者や役員・社員が、自身が持つ人間関係の中から、自社に欲しい人材に直接アプローチして、転職をさせる行為です。
ヘッドハンティング会社に依頼する費用がかからないことため、比較的ローコストで、採用できることはメリットです。ただ、同業他社からターゲット人材を引き抜く場合、それが発覚すると著しく関係が悪化する可能性があります。また、取引先の人材の場合は、取引関係が損なわれるリスクもあるということを認識しておく必要があります。
最悪の場合、引き抜き行為が、社会的相当性を大きく逸脱し、会社に多大な不利益をもたらすものと認めらるようであれば、不法行為と認定されるケースもあります。過去には、自身が退職した会社から元同僚を現職に勧誘するなど、組織的な引き抜き行為を行ったとして、損害賠償が認められた判例もあります。
ヘッドハンティングと何が違うの?
まず、引き抜きとの大きな違いとして、ヘッドハンティングは、専門のヘッドハンティング会社のコンサルタントが対応します。ヘッドハンティング会社は、調査活動を通じてターゲット人材をリストアップし、各候補者に個別のアプローチをしていきますが、リスクを軽減して候補者との交渉を円滑に進めるために、ある程度、話が具体化するまでは、通常は依頼企業の名前を伏せたまま交渉を進めます。
これまでヘッドハンティングは、主に外資系企業などが行っていた人材獲得の手法でした。しかし、人材の流動化の加速や企業の国際化に伴い、現在では採用戦略の一環として一般化してきています。また、従来は、ヘッドハンティングの「ヘッド」は「頭脳」を意味し、経営者や幹部候補などの役職付きの人材をターゲットにしていましたが、近年は、施工管理や設計などの技術職や営業職といった層まで対象を広げているため、幅広いやくい広く浸透してきました。
ヘッドハンティングはプロに依頼するべき3つ理由
トラブル防止
なんと言っても一番重要なことはトラブルを回避することです。引き抜きの場合、自社の関係者が他社のターゲット人材に直接声をかけることになるので、「○○社から引き抜きの声をかけられた」と業界内で噂になるなど、採用に至らなくても、自社の評判に影響が出ることがあります。
ヘッドハンティングの場合は、ヘッドハンターが候補者に対して注意喚起を行いつつ進めることがほとんどであり、場合によっては秘密保持契約を締結するなど、トラブルを避けるためにさまざまな策を講じながら進めます。また、ある程度、話が具体化するまでは、通常は依頼企業の名前を伏せたまま交渉を進めるため、不特定多数の人に話が広がることもありません。
建設業界や不動産業界では、同業者・協力業者とプロジェクトを進める機会がよくあります。その中で知り合った人の中に、自社に来てもらいたいような優秀な人が見つかることもあるでしょう。ただ、その人に直接、自社への転職を促すような話をしてしまうと業界内で自社の評判を落としたり、揉めたりと、他社と摩擦が生じるリスクがあります。例え、すぐに移籍が実現しなかったとしても、そういった魅力的な人材とは、良い関係を維持しておきたいはずです。仲介者としてヘッドハンターを活用することで、そういったリスクを最小化しながら進められます。
引き抜きもヘッドハンティングも、どちらも、行為自体は違法ではありません。憲法に規定されている通り、退職の自由および職業選択の自由があるためです。ただし、引抜行為を行った者が取締役などの役職者であったり、引抜行為を行ったのが前職に在職中であったりとすると、違法行為ともなり得るため注意が必要です。
引き抜きの違法性を問われた具体的な事例として、ラクソン事件という有名な裁判例があります。会社に在職中の幹部社員が、部下の大多数を転職先の競合他社に引き抜いた行為の違法性が問題になりました。この裁判例では、幹部社員による引き抜き行為が、「計画的かつ極めて背信的」で、「社会的相当性を逸脱した違法な引き抜き行為」とされ、幹部社員の損害賠償責任が認められました。
ヘッドハンティング会社に依頼することで、上記のようなトラブルを防止できるメリットがあります。
交渉仲介やプロデュース
ヘッドハンターは、候補者との交渉を円滑に進めるための仲介者となります。一般的に、日本では、雇用条件を直接交渉することタブー視されることも多く、企業や候補者からすると、ヘッドハンターが介在することで、候補者との関係を損なうことなく、互いに納得のできる条件で着地することが可能です。
また、ヘッドハンターは、「候補者が移籍するためには何が必要か」という点について把握し、条件交渉の助言を行います。近年は、売り手市場であることから、転職市場には多くの求人が存在します。その中で、候補者の移籍を促すためには、その候補者に響く要素を事前に把握し、訴求する必要がありますが、ヘッドハンターは良き助言役となるでしょう。
採用のアウトソーシング
超売り手市場となった採用市場においては、いかに転職市場に出ていない転職潜在層へアプローチしていくかが重要になってきます。
ヘッドハンティングは、他社で活躍中の人材も含めた転職潜在層にアプローチしていくのに最適な手法と言える一方で、転職意欲が薄かったり、移籍への興味を喚起できても現職で携わっているプロジェクトの状況などからすぐ動くことが難しい場合もあります。つまり、時間をかけて、お互いの理解を深めたり、中長期的なスパンで進めていく必要があるのです。初アプローチから半年以上、場合によっては数年の時間をかけて接触を重ねて、やっと移籍を実現したケースもあるように、リードタイム非常に長くなる可能性もあります。
普段の採用業務で忙しい採用担当者が、候補者一人一人と、中長期的で綿密にコミュニケーションが取れる余裕があるでしょうか。おそらく、ほとんどの企業が難しいでしょう。
ヘッドハンティング会社に依頼することで、そういった業務をアウトソーシングすることが可能です。ヘッドハンターは、中長期的に候補者とのコミュニケーションを取りながら、移籍温度感の醸成を図っていきます。誰しも、現職への不満が募ったり、転職への気持ちが高まったりするタイミングがあります。そういったタイミングを逃さず、アプローチできるか否かは非常に重要となります。
転職は、「ご縁」と「タイミング」が命です。タイミングを逃さずヘッドハンティングするためにも、中途採用はプロに任せてみてはいかがでしょうか。
まとめ
超売り手市場であり、キャリア観が多様化している中、各企業は人材確保のため高い給与など好条件の待遇を提示していますが、それでも思うような結果が出ていないケースが多々あります。採用市場に出る前の人材と早く接点を持って、すぐには転職をしないうちから良好な人間関係を築き、その数を増やしていくような「ナーチャリング=育てる」発想が必要です。
そのため、単に面接で自社の求める経験やスキルにマッチするかどうかを判断するということにとどまらない広範な役割が、採用に携わる人に求められるようになってきています。
例えば、それなりのポジションに就いて現役で活躍していている人材にとって、新しい職場に移籍するということは、人間関係を一から構築する必要があるためリスクを取ることであり、給料が少しアップするくらいで移籍してもらうのは難しいと言えます。そういった人材と向き合い、「口説く」スタンスで移籍へのマインドを醸成していくような業務は、従来の企業担当者の役割の枠外かもしれません。
ヘッドハンターは、そういったスタンスでターゲット人材と向き合い、移籍を促すノウハウを蓄積しているプロフェッショナルです。
ターゲット人材のキャリア相談に応じ、適切なキャリアプランを提案します。その際、紹介するキャリアプランにどのような価値観を持つ人が適しているかを考慮し、最適なマッチングを目指します。ターゲット人材に寄り添い、その人が100%の力を発揮して入社後に活躍できるようサポートすることが、結果的にクライアント企業にとっても大きなプラスとなるはずです。
自社の採用担当者だけでそういった業務に対応していくのが難しい場合は、ヘッドハンティングの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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