現場監督の年収相場は?―建設業界に精通したコンサルタントが解説

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金田 侑万
コンサルタント
金田 侑万
文教大学卒業後、国内最大級のヘッドハンティング会社に新卒入社。大手不動産デベロッパーや建設会社等のクライアントを担当するヘッドハンターとして、技術職・専門職のヘッドハンティング業務に従事。 複数の社内表彰を受賞するなど、建設・不動産業界の採用支援において、豊富な実績を有する。 その後、弊社代表の高木と共に株式会社レガシーを創業。建築・内装施工における施工管理や不動産デベロッパーにおける用地仕入れ営業職など、採用難易度が非常に高いポジションのヘッドハンティングを得意としている。 埼玉県出身。

目次

少子高齢化による人材不足に悩まされている日本の労働市場ですが、建設業界の人手不足は特に深刻です。「現場監督・施工管理人材が足りない」「社員が高齢化している」というような声は、近年非常に増えております。そして、建設需要に対する人材供給が追いついていないため、必然と建設業従事者の年収水準は高くなっています。特に、現場の指揮を行う施工管理人材の希少性は高まっており、年収相場は近年、天井知らずで上昇しています。本記事では、現場監督の年収水準が上昇している背景や年代別の平均年収、さらに、他社から優秀な現場監督をヘッドハンティングする際に提示すべき年収の目安について、建設業界に精通したコンサルタントが、最新データをもとに解説します。

データで見る現場監督の年収相場

まず、日本の建設業全体の賃金動向を見ると、この10年間で着実な上昇が確認できます。厚生労働省「毎月勤労統計調査」の賃金指数によれば、2013年を100とした場合に2022年には115程度まで上昇しており、10年前と比較して給与水準が約15%上がっています。特にここ数年は上昇幅が大きく、2023年以降も賃金水準はさらに上がる見通しとされています。これは最低賃金の継続的な引き上げや、人手不足による企業側の賃金改善努力が影響しています。 国交省が決定する労務単価の全国・全職種平均は、18年度が1万8632円、19年度が1万9392円、20年度が2万214円と、毎年ほぼ4%ずつ上昇しています。現場監督の年収もこうした流れの中で、増加傾向にあります。例えば、大手ゼネコン各社では現場監督職の平均年収が900万円程度との報告もあり、所長クラスの人材であれば、年収1,000万円~1,500万円に至ることもあり、従来より高い水準になってきていることが分かります。厚生労働省の統計でも建設技術者(現場監督を含む)の平均年収は前年比プラスで更新が続いており、業界全体として年収水準が底上げされている状況です。

資料出所:全国・全職種平均の公共工事設計労務単価の推移(日経クロステック)

年収相場が上昇している背景

では、なぜ現場監督の年収は上昇しているのでしょうか。

大きな要因としては、やはり建設業界の人材不足です。建設業界では就業者の高齢化と若年入職者の減少が顕著で、現場経験豊富なベテラン人材の引退が相次いでいます。実際、2023年には「人手不足」を原因とする建設業の倒産が過去最多の91件(前年の約2.7倍)にのぼり、人材不足が企業経営を直撃している状況です。特に、2025年前後には団塊世代の大量退職で経験豊富な現場監督が急減すると見込まれており、各社で人材獲得競争が一段と激化すると予測されています。建設業界は、人材が最大の資本であるため、人材不足の下で各社が優秀な現場監督を確保するために、または離職防止のために、待遇改善を進めていることが年収上昇に直結しています。

また、現場監督人材の流動化が、年収相場の上昇に影響しているでしょう。外部から即戦力現場監督を中途採用するためには、現年収より高額なオファーを提示することが一般的です。近年は、転職がネガティブな意味ではなく、キャリアアップとして認知されるようになってきました。建設業界は、良くも悪くも旧来からの習慣が残っており、IT業界やコンサル業界などと比較をすると、人材の流動性が低い業界でした。それでも徐々に、転職市場が活況になってきており、結果的に年収相場の上昇に寄与していると考えられます。

長年、現場監督の年収水準はハードな業務内容や長時間労働に見合っていない、と言われていましたが、やっと適正な水準に収束している、とも言えるのでしょう。

年代別に見る現場監督の平均年収(20代~50代)

近年の現場監督の年収水準は、どのような水準になっているのでしょうか。実際に、多くの現場監督との接点を持つ当社が調査したデータの一部を公開します。

20代(未経験~業界経験5年前後)

20代の新卒あるいは第二新卒などの未経験者から、入社5年以内の若手人材の年収水準は、350万円~500万円のレンジになるケースがほとんどです。残業時間によって時間外手当も変動しますので、夜間や土日の業務が多い会社であれば、若手人材であっても年収500万円近い水準になることもあります。

30代(業界経験10年~20年)

30代のミドル層では、早ければ所長として現場を統括するポジションになる人も現れます。多くの場合は、現場主任~次席クラスといったところでしょうか。年収水準は、600万円~800万円のレンジが一般的な水準でしょう。しかし、建設業界では、この30代のミドル層が非常に不足していることもあり、近年は採用競争が激化しています。それに伴い、今後、年収水準がさらに上昇することも想定されます。

40代~50代(業界経験20年~30年以上)

40代~50代のベテラン層では、多くの方が現場所長として、現場の施工管理に携わることになります。管理職になるため、残業手当は支給されません。そのため、非管理職時代と比較すると、残業手当が無くなった分、現場所長になっても、年収水準が変わらないという方もいるようです。一般的には、現場所長クラスで、年収700万円~1,200万円というレンジが目安になります。大手ゼネコンやサブコンでは、それ以上の年収水準の方もいらっしゃいますが、中小~中堅建設事業者では、上記レンジに収まることがほとんどです。

60代(30年以上)

60代が、最も個人差があります。なぜなら、企業ごとによって、定年となる年齢や定年後の年収水準の考え方が大きく異なるからです。年収としては、500万円~1,000万円というレンジが目安になります。とある企業は、60歳の定年を機に、定年前の給与の50%程度にまで落ち込むこともあるようです。一方で、定年を65歳に設定した上、原則、65歳までは待遇を落とさず勤務できるような企業もあります。定年延長の議論も進んでいるため、今後は変化があると想定されますが、60代の方の待遇は、企業の規定やルールに左右される部分が大きいのが現状です。

中途採用で他社に負けないためのオファー年収とは?

人材獲得競争が激化する中、他社から優秀な現場監督をヘッドハンティングで中途採用するには、魅力的な待遇を提示する必要があります。特に即戦力となる中堅~ベテラン級をヘッドハンティングする際は、現職での待遇以上のオファーを出すことが不可欠です。

具体的な目安としては、年収800万円前後~900万円台の提示が一つのラインと考えられます。近年は中小建設事業者であっても、現場監督の年収水準を800万円前後まで引き上げていることも多く、ヘッドハンティングで優秀人材を採用するには、最低でも年収800万円前後~900万円台の提示が不可欠になってきています。

また、ヘッドハンティングの際は、「現年収を基準として、どれだけ年収アップが見込めるのか」などの点を候補者の方は気にしています。一般的には、現年収の1割~2割アップくらいの水準が一つの目安であり、「現年収より1割~2割程度、年収がアップするのであれば、移籍を決断しよう」と考える方が多い傾向にあります。

もちろん、候補者の方にとっても、年収が全てではありません。ポジションやキャリアパス、働き方など、移籍を検討する上で考慮する要素は多岐に渡ります。一方で、年収が最も重要な要素になることが多いことも事実です。なぜなら、現場監督の場合、移籍前と移籍後で劇的に業務内容が変わることは稀であり、基本的には、移籍後も同様の業務に従事するため、「同じ仕事をするなら、待遇が良い会社で働きたい」と考えるからです。

現場監督のヘッドハンティングを検討している建設事業者は、競争力のある年収提示が可能かどうか、事前に検討しておく必要があるでしょう。万が一、既存社員とのバランスで、競争力のある年収提示が難しい場合は、自社の給与体系そのものも見直す必要があるのかもしれません。

まとめ―人材獲得競争を勝ち抜くために

本記事では、現場監督の年収相場について、解説をしてきました。

現場監督の年収相場は上昇傾向にあり、今後もこの流れが続くことが予想されます。人材獲得競争を勝ち抜くためには、戦略的なアプローチが欠かせません。特に、転職市場における年収相場を定期的に調査し、自社の提示年収が遜色ない水準となるよう、見直すことは非常に重要です。相場とかけ離れた低い条件では優秀な人材を確保できないだけでなく、社内の現場監督が流出してしまうリスクもあります。

「求人票を出しても、良い人材からの応募が来ない」

「自社の年収水準が適正かどうか分からない」

「現場監督の中途採用に苦労している」

 こんな悩みを抱えている建設会社は、ヘッドハンティングの活用を検討する価値があります。今後、建設業界で生き残っていくには、「いかに優秀な現場監督を確保するのか」が命題になってくることが間違いありません。既存サービスでの採用が、上手く機能していない会社ほど、ヘッドハンティングが人材不足解消への有効な一手となるでしょう。

LEGACY(レガシー)は、建設業界特化のヘッドハンティングサービスを展開しています。

  • 建設業界に精通したコンサルタント陣
  • 建設業界における様々な人材との独自ネットワーク
  • 建設業界特有の事情や時流を踏まえた採用戦略の支援

など、建設業界特化のヘッドハンティングだからこそ、ご提供できるサービスがあります。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。

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