外国人を施工管理や現場監督として採用するメリットと注意点とは?

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浅利 光
コンサルタント
浅利 光
筑波大学体育専門学群卒業後、独立系M&A仲介会社に入社し、M&A案件のソーシング及びエグゼキューションに従事。 建設セクターを担当するチームに所属し、建設業界・建設コンサルタント業界において、事業承継や人材不足等の課題を抱える中小企業オーナーに対するコンサルティング業務を行う。 その後、東証プライム上場のM&A仲介会社を経て、株式会社レガシーに参画。建設コンサルタントや建築・土木・管・電気等の施工管理技士の有資格者の採用支援を得意とする。 北海道出身。

目次

近年、日本の建設業界は高齢化が進んでおり、人材不足が顕著になっています。一方で、若手人材からの建設業界の人気は下落する一途を辿っており、新卒入社で建設業界、特に施工管理・現場監督としての就職を希望する学生の数は年々減少しています。そして、せっかく入社をした貴重な若手人材でさえ、施工管理・現場監督の仕事に対して、理想とのギャップを感じ、早期離職してしまうケースも多々あるようです。つまり、国内の若手人材の採用・育成・定着は非常に難しくなっており、そういった状況を考慮して、新卒採用を意図的に止めている会社もあります。しかし、中長期的な目線で考えると、若手人材の確保と育成は、企業の競争力に直結する要素であり、目をそらすことのできない問題でもあります。そんな中、近年、海外の技術系大学を卒業した若手人材を採用する建設会社が増えてきました。本記事では、建設業界に精通したコンサルタントが、外国人施工管理を採用するメリットと注意点を解説します。

建設業界では、高度外国人材の活躍の場が広がっている

外国人を施工管理として採用する場合、「高度外国人材」と呼ばれるような方が採用の対象となります。「高度外国人材」とは、専門的な知識や技術を持ち日本で専門職に従事する外国人労働者のことで、建設業界では主に「技術・人文知識・国際業務」の区分(通称「技人国」)で就労することになります。この在留資格は、機械工学の技術者、通訳、デザイナー、企業内の語学教師、マーケティング担当者など幅広い職種の外国人に付与される代表的な在留資格です。建設業においても、現場の施工管理や設計、技術開発など、専門知識を要する業務であればこのビザで働くことが可能です(職人など現場作業者は対象外であり、技能実習や特定技能といった別制度が該当します)。

近年、建設業界で働く高度外国人材の数は急増しています。例えば、建設業において「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働く外国人は、2015年の1,958人から2024年には16,161人まで増加しました。この大幅な増加は、国内の少子高齢化による人材不足や外国人材受け入れ制度の整備などが背景にあります。実際、建設業における外国人労働者全体も過去7年で約3.5倍に増えており、その多くがアジア出身者です。中でもベトナム、インドネシア、フィリピン、中国が主要国籍で、全産業で上位のネパールやブラジルは建設分野では比較的少ない状況です。それでも、近年ネパールやミャンマーからの人材も増加傾向にあり、今後の活躍が期待されています。政府の出入国在留管理庁や厚生労働省の統計でも、建設業の外国人労働者増加が報告されており、人手不足が深刻化する建設業界にとって高度外国人材は重要な戦力となりつつあります。

資料出所:厚生労働省「就業条件総合調査」より加工

建設業界における高度外国人材・施工管理職の活躍事例3選

ここでは、インドネシア、ネパール、ミャンマー出身の高度外国人材が日本の建設業界で施工管理職等として活躍している具体的な事例を紹介します。

インドネシア出身 Rさん

沖縄県の建設会社A社では、インドネシア出身のRさん(25歳)を高度外国人材として採用しました。Rさんは大学で建築を学んだ後、2024年に来日。同社の設計部でBIMチームのエースとして活躍しており、入社半年足らずで重要ポジションに抜擢されています。BIMによる建築図面の3D化という新たな取り組みに対し、彼女は「日本語を理解しながら操作も覚える必要があり大変だけれど、学べて楽しい」と流暢な日本語で語っており、その積極性と柔軟性が評価されています。A社にとって外国人採用は初めてでしたが、事前に社長自らインドネシアへ出向き直接本人と面談するなど手厚い受け入れ準備を行い、入社後は彼女がBIM推進の牽引役となりました。Rさんは「日本の機能的な住宅をインドネシアでも建ててみたい」と夢を語り、東南アジア展開を見据える会社のビジョンとも合致しているといいます。このように、インドネシア人材が最先端技術や海外展開の架け橋として活躍する好例となっています。

ネパール出身 Pさん

中堅建設コンサルタント会社B社では、ネパール出身のPさん(30歳)を高度外国人材として採用しました。Pさんは大学で建築を学んだ後、ネパールで数年間就業。当時は、現地企業で土木設計に従事していました。ネパールでは、JICA(国際協力機構)を通じて、日本の技術支援によって建設された道路や橋が多数あり、Pさんは小さい頃から日本の建設業界に対する尊敬の念がありました。そして縁があり、エージェントを通じて、2021年に来日。現在は、中堅建設コンサルタント会社B社のCADオペレーターとして活躍しており、元々CADソフトの使用には慣れていたことから、早期から戦力になっているとのことです。

ミャンマー出身 Fさん

東京都の建設会社C社は、2015年からいち早く外国人技術者の受け入れを開始し、現在も多くのミャンマー人を雇用しています。C社では内装・改修工事を中心に事業展開しており、これまでに受け入れた外国人18名のうち全員がミャンマー出身という特徴があります。新人のミャンマー人技術者を迎えるにあたり、同社は自社内に実習用の施設を用意し、基礎的な技術や安全ルールを教え込んでから現場配属するなど、きめ細かな育成策を取っています。その結果、外国人スタッフは日本の現場文化にスムーズに適応し、高い定着率と成長を示しています。中でも、ミャンマー出身技術者のFさんは、社内でもリーダーのような存在であり、外国出身でありながらも、社内で重要な役割を担っています。また「ミャンマーの若者たちを指導することで、日本人社員側の人材育成スキルも向上した」とC社の経営陣は語っており、外国人受け入れが社内の教育力強化にもつながったといいます。さらにC社が提携するミャンマーの送り出し機関や大学でも日本行きの希望者が増え始めており、現地の若手育成にも好循環をもたらしているようです。「外国人だからと身構える必要はなく、真摯に向き合えば必ず力になってくれる」との受け入れ企業の声もあり、ミャンマー人材が現場で信頼を勝ち取っている事例と言えます。

余談ですが、施工管理技士資格は日本の国家資格ですが、外国人でも一定の条件を満たせば、施工管理技士資格の取得が可能です。外国人が施工管理技術検定を受験する場合、学歴要件と実務経験要件を満たす必要があり、学歴と実務経験に応じて、取得難易度が変わってきます。

高度外国人材を施工管理として採用するメリット

高度外国人材を施工管理職として採用することの主なメリットは、やはり、中長期的な戦力として、若手人手を確保できることです。

冒頭にも触れたように、日本の建設業界は高齢化が進んでおり、若手人材からの建設業界の人気は下落する一途を辿っています。そして、せっかく入社をした貴重な若手人材でさえ、施工管理の仕事に対して、理想とのギャップを感じ、早期離職してしまうケースも多々あります。10年後・20年後には現場を支える多くの日本人ベテランが引退してしまう中で、外国人施工管理は、次世代の主力技術者として活躍できるポテンシャルを秘めています。日本語が一定程度話せることが前提ではあるものの、海外の建築系・土木系大学出身者を採用すれば、基礎知識を備えた若手技術者を一から育成することができます。高度外国人材は一定の専門知識や学歴を持って来日するため、5~10年のスパンで日本人と変わらない一人前の施工管理技術者に育成することも可能でしょう。

近年、日本人と外国人の若手人材を比較した際に、外国人材の方が評価されることも多々あります。それは、外国人材が持っている「マインド」です。

日本に来日する外国人材の中の多くは、

「政治情勢や経済が不安定なため、母国で良い仕事がない」

「家族に一定金額の仕送りをする必要があるが、母国ではそれが難しい」

「長期的に日本で活躍したい」

という明確なモチベーションで、来日する人材が非常に多いです。結果的に、高い意識で仕事に取り組む人材が多く、仕事のキャッチアップが早かったり、ハードワークを嫌がらない姿勢があったり、マインドの面からもポテンシャルが高い人材が多いという声を耳にします。日本人・外国人という国籍の問題で一括りにするつもりはありませんが、日本人の若手施工管理技術者の早期離職率が非常に高い中、外国人の若手人材は、高いモチベーションで、長く活躍してくれる傾向にあるようです。

日本人の若手施工管理技術者が減っていく一方で、今後の日本の建設業界では、外国人施工管理技術者の活躍が鍵となることは間違いないでしょう。

加えて、若手の外国人材が活躍することで、既存社員への好影響にも繋がります。仕事に意欲的な外国人材が、資格取得に挑戦したり、仕事を通じて成長することで、多様な人材が互いに刺激し合う職場環境が生まれ、それが新たな採用に繋がることも期待できます。

高度外国人材を施工管理として採用する際の注意点

高度外国人材を施工管理として採用することは、大きなメリットがありますが、外国人材を受け入れる際はいくつかの注意点があります。

言語・文化の壁によるコミュニケーションギャップへの配慮

文化・言語の壁は、最も懸念されるポイントです。日本語が十分に通じない場合、現場での指示の誤解やミスコミュニケーションが起こり得ます。また、日本独特の職場習慣(報告・連絡・相談の徹底、安全規則、職人との接し方など)に戸惑う外国人も少なくありません。例えば、とあるインドネシア出身の施工管理の方も「日本独特の言い回しや仕事の習慣を覚えるのに苦労した」と語っていました。日本語で図面や専門用語を理解しながら新技術を習得するのは容易ではなく、相当な努力が求められます。日本語レベルが、N3~N4程度であればコミュニケーションに問題ないものの、言語の壁に対する配慮は一定程度必要です。また文化の違いも配慮する必要があります、例えば指示の伝え方ひとつにしても、日本人同士では暗黙知で伝わることが外国人には伝わらないケースがあります。叱責の仕方やホウレンソウのルールなども国によって感じ方が異なるため、誤解を生まないコミュニケーションを心がける必要があります。最終的には、外国人材に日本での仕事に慣れてもらう必要があるものの、雇用主としても一定程度の配慮や準備が必要になってきます。

採用の際のミスマッチ防止と入社前後のフォロー

現状、技能実習生や特定技能人材の採用経験はあっても、外国人施工管理は採用したことがない、という建設会社がほとんどでしょう。そのため、高度外国人材を施工管理として採用する際に、どのような選考基準で採用したらいいのか、分からないケースが多いと思います。「業務に支障が出ないレベルの日本語能力は、どう見極めたらいいのか」「技術レベルはどの程度なのか」など、外国人材特有の選考基準が必要になります。また、日本での生活が初めてとなる方がほとんどであるため、入社前後の渡航や住居探し、行政手続きなどへのサポートも必要となります。中小企業の場合、専門のスタッフを配置する余裕がないことも想定されるため、外国人材の受け入れ・サポート体制は、早期離職防止の観点からも、検討する必要があります。

まずは、派遣社員として受け入れてみることも一つの手段

「海外人材の施工管理を採用したい。でも、どう進めればいいか分からない。」「外国人施工管理が本当に自社にマッチするか分からない」そんな不安を持っている建設会社は、まずは外国人施工管理の派遣社員を受け入れてみてはいかがでしょうか。

まずは派遣社員として受け入れてみた上で、パフォーマンスやマッチ度を確認した上で、本当に中長期的に活躍してもらえそうな人材だった場合、正社員として雇用をすることが可能です。万が一、マッチしなかった場合は、派遣契約を終了することができますので、リスクを最小限に留めることができます。また、派遣の場合は、派遣元が派遣社員の生活サポートまで一気通貫で対応することが多く、受け入れ企業の負担も軽減されます。

  • 「若い人や未経験人材を採用しても、すぐに辞めてしまう」
  • 「新卒採用に苦労している」
  • 「若い社員が少なく、年齢構成に偏りがある」

 こんな悩みを抱えている建設事業者は、外国人施工管理の派遣サービスの活用を検討する価値があります。今後、建設業界で生き残っていくには、「ポテンシャルのある若手人材を確保し、自社で育成すること」が命題になってくることが間違いありません。既存サービスでの採用が、上手く機能していない会社ほど、外国人施工管理の活用が人材不足解消への有効な一手となるでしょう。

LEGACY(レガシー)は、外国人施工管理人材に特化をした人材派遣サービスを展開しています。

  • 建設業界に精通したコンサルタント陣
  • インドネシアの技術系大学との独自ネットワーク
  • 建設業界特有の事情や時流を踏まえた採用戦略の支援

など、外国人施工管理人材に特化をした人材派遣サービスだからこそ、ご提供できるサービスがあります。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。

※プロジェクト設計及びお見積りは無料です。

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