現代の日本では、従来の採用手法だけでは優秀な人材の確保が難しくなりつつあります。こうした背景から、ヘッドハンティングを導入する企業が増えてきました。しかし、ヘッドハンティングの連絡は突然やってくるものです。「なぜ自分に?」「怪しい話では?」と不安に思う方も少なくありません。実際、転職を考えていない状況で見知らぬヘッドハンターから連絡を受ければ、警戒心が生まれるのも当然のことです。本記事では、ヘッドハンティングの連絡が「怪しいもの」なのかどうかを見極めるためのポイントや、実際に連絡を受けた際にどのように対応すべきかを、建設業界に特化したヘッドハンティングのプロの視点から解説します。
ヘッドハンティングとは
ヘッドハンティングとは、他社で活躍している優秀な人材(いわゆる「転職潜在層」)に対して企業が直接アプローチし、自社に招く採用手法です。一般的な求人募集とは異なり、ヘッドハンティング会社に所属するヘッドハンターが企業の代理人となって、対象となる人材に電話・メール・SNS・手紙など様々な手段で連絡を取ります。これにより「現在は転職を考えていない」人にもコンタクトできる点が特徴です。実際、ヘッドハンティングで声がかかる人の約8割は“今すぐ転職を考えていない”層とも言われています。
元々ヘッドハンティングは、経営幹部や専門職など限られた層を対象に外資系企業が行う特殊な採用手段でした。しかし近年では、終身雇用の崩壊や人材不足の深刻化に伴い、日本企業でも広く活用され始めています。大企業や外資系だけでなく、中小企業やベンチャー企業でも優秀な人材確保のためにヘッドハンティングを積極的に行うケースが増えています。特に建設業界や不動産業界では慢性的な人手不足もあり、求人広告で待つだけでは出会えない人材に直接アプローチする手法としてヘッドハンティングが注目を集めています。日頃からヘッドハンティングの連絡が来る可能性は、決して珍しい時代ではなくなってきたと言えるでしょう。
ヘッドハンティングは怪しいのか
突然「ヘッドハンター」を名乗る人物から連絡が来ると、「本当の話だろうか?怪しいのではないか?」と戸惑う方も多いでしょう。しかし結論から言えば、ヘッドハンティング自体は決して怪しい手法ではありません。むしろ現在では、企業が優秀な人材を確保するためのごく一般的な採用手段の一つになりつつあります。ヘッドハンティングの対象となるのは選ばれた限られた人材であるため、ほとんどのビジネスパーソンにとって未経験で馴染みが薄く、「怪しい」という印象を抱かれやすい面もあります。加えて、一部に強引な手法をとるヘッドハンターがいることも、そのイメージに拍車をかけているのでしょう。
実際には、企業からヘッドハンティングの依頼を受ける人材は「業界内でぜひ欲しい」と評価された人です。ヘッドハンティングの連絡を受けたということ自体、裏を返せば「あなたが業界で求められる優秀な人材である」という証とも言えます。先述の通り声がかかる多くの方は転職を前提に動いていませんが、それでも声がかかるのは現職での活躍が評価されているからです。したがって、“ヘッドハンティング=怪しい”と即断する必要はありません。
もっとも、世の中にはヘッドハンティングを装った不正な勧誘や詐欺まがいのケースも存在するため、警戒心を持つこと自体は大切です。信頼できるヘッドハンティング会社であれば怪しいことはありませんが、連絡を受けた際には本物かどうかを見極める意識を持ちましょう。
日本では有料職業紹介事業(人材紹介業)を営むには厚生労働省の許可が必要であり、許可なくヘッドハンティング事業はできません。つまり正式に活動しているヘッドハンティング会社であれば必ず厚生労働大臣の許可番号を取得しています。このように法的にも整備された正当なサービスであることをまず押さえておきましょう。また、通常ヘッドハンターは採用を依頼した企業側から成功報酬を得るビジネスモデルであり、声をかけられた候補者から金銭を求めることはありません。したがって「セミナー受講料を払ってほしい」「教材を買ってほしい」などと金銭負担を求められた場合、それは怪しいヘッドハンティングだと考えて差し支えありません。
連絡を受けた時に考えるべきポイント
では、実際にヘッドハンティングの連絡を受けた際、どのように対応し何を確認すればよいのでしょうか。専門のヘッドハンティング会社の立場から、ヘッドハンティングの連絡を受けたときに考えるべきポイントを解説します。
まずは冷静に対応する
思いがけない連絡に驚くかもしれませんが、焦らずに対応しましょう。勤務中に電話を受けた場合は「改めて話を聞きたいので後ほど連絡します」と伝え、時間をもらっても構いません。同僚の前で詳しく話しづらい場合は、後日あらためて電話やメールでのやり取りに切り替えてもらうことも可能です。大切なのは、せっかくの機会を頭ごなしに断ってしまわず、一呼吸おいて情報を集める姿勢です。
ヘッドハンティング会社の信頼性を確認する
連絡を受けたら、まずそのヘッドハンティング会社について調べてみましょう。会社名を聞いてインターネット検索し、公式サイトや会社概要が存在するか、実在する企業かを確認します。信頼できる会社であれば所在地や代表者、実績などを公式に公開していますし、ニュース記事や業界誌で取り上げられている場合もあります。反対に、ネットでほとんど情報が出てこない会社や、他社名を騙って連絡してくるような場合は注意が必要です。なお、多くの場合、ヘッドハンターは最初の連絡で依頼元の企業名(求人企業名)は明かしません。これは守秘義務上当然のことで、企業名を教えてもらえなくても不自然ではありません。しかしヘッドハンティング会社(ヘッドハンターが所属する会社)の名前は聞けば教えてくれるのが通常です。もし担当者が自分の所属企業名を名乗らない・はぐらかすようであれば、信用できない相手である可能性が高いでしょう。加えて、前述した厚生労働省の許可番号の有無も信頼性チェックの材料になります。公式サイト上で許可番号が確認できたり、厚労省の公開する人材紹介事業者リストで検索して該当企業が出てくるか調べてみるのも有効です。
連絡内容の具体性をチェックする
ヘッドハンターから提示された話の内容にも注意を払いましょう。信頼できるヘッドハンターであれば、「○○分野で経験を積まれたあなたに、△△のポジションをご提案したい」といったある程度具体的な役職や求めるスキルの説明があります。一方で怪しいケースでは、「あなたを高収入で採用したい会社がある」等と内容が漠然としていることが多いです。また、本来であればヘッドハンティング経由の選考でも通常の転職と同様に面談・面接プロセスがあります。にもかかわらず、不審な勧誘ではそのプロセスについて詳細を語らず、「とにかく会ってほしい」「すぐにでも結論を出してほしい」などと即断即決を迫る傾向があります。こうした場合は注意が必要です。正式なヘッドハンティングであれば、候補者にも十分考える時間を与え、面談日程の調整や選考プロセスも丁寧に説明してくれるものです。
金銭や商品の要求がないか確認する
前述のとおり、正規のヘッドハンティングでは候補者がお金を支払うことは一切ありません。したがって、連絡を受けた段階で「◯◯セミナーの受講が必要」「キャリアアップ教材の購入をおすすめします」などと金銭の支払いを促されたら要注意です。残念ながら、中にはヘッドハンティングを口実に高額なサービスへ誘導し利益を得ようとする業者も存在します。少しでも不審に感じたらきっぱりお断りするか、「検討します」と保留にして信頼できる第三者に相談しましょう。
話だけでも聞いてみる価値はある
相手が信頼できそうだと判断できたら、将来のキャリアの参考だと思って話を聞いてみることをおすすめします。ヘッドハンターとの面談や電話相談では、現在のあなたの市場価値や業界動向についてフィードバックを得られる貴重な機会にもなります。話を聞いたからといって必ず転職しなければならないわけではありません。むしろ「転職活動をしないことの方がリスク」という見方もあるほどで、情報収集自体にはメリットがあります。ヘッドハンターも、あなたの意思を第一に尊重してくれるのが普通ですので、興味があれば前向きに耳を傾けてみましょう。もちろん、話を聞いた結果魅力的なオファーでなければ丁重にお断りすれば問題ありません。
最終的な判断は慎重に
ヘッドハンティングの話を受けるか断るか、最終的な判断はご自身のキャリア観にもとづき慎重に行いましょう。ヘッドハンティングの誘いに乗ったからといって、必ずしも転職しなければならないわけではありません。提案されたポジションの内容や条件をしっかり確認し、現在の職場での状況とも比較検討してください。「なぜ自分が選ばれたのか」をヘッドハンターに聞いてみるのも良いでしょう。自分のどんな経験や強みに注目して声がかかったのか知ることで、オファーの妥当性も判断できますし、たとえ転職しない場合でも今後の自己研鑽のヒントになります。なお、選考が進んで企業から正式に内定をもらった後であっても、現職の退職届は慎重に出すようにしてください。採用選考の途中で先走って退職してしまうと、万が一内定が取り消しになった場合にリスクが生じます。
まとめ
ヘッドハンティングから突然の連絡を受けると驚くかもしれませんが、近年ではヘッドハンティングは決して珍しくも怪しいものでもありません。企業の人材獲得競争が激化する中、転職市場に出てこない優秀層にアプローチする有効な手段として広く活用されています。特に建設業界のように人材不足が深刻な分野では、ヘッドハンティングの重要性は増しています。
もちろん、不審な勧誘には引き続き注意が必要です。「会社名を名乗らない」「妙に話が曖昧」「やたらと即決を迫る」「お金がかかると言われた」──このようなケースでは慎重になりましょう。一方で、正式なヘッドハンティング会社からの声かけであれば、基本的に費用負担はなく、あなたのキャリアにプラスになる情報提供や出会いの場となるはずです。当社のように建設・不動産業界に特化した信頼できるヘッドハンティング会社であれば、守秘義務の下で適切にプロセスを進めますので、ご安心ください。
ヘッドハンティングの連絡を受けた際は、本記事で述べたポイントを参考にしつつ、まずは落ち着いて対応してください。ヘッドハンティングは怪しいのかと不安に感じる必要はありません。冷静に見極めを行い、チャンスと思えば積極的に話を聞いてみましょう。最終的な判断は慎重に行えば、ヘッドハンティングから思わぬキャリアアップの扉が開くかもしれません。あなたの今後のキャリアにとって、少しでも有益な判断となることを願っています。












