近年、サブコンの人手不足が深刻化しています。九州地方での半導体工場の建設ラッシュなど、国内での建設投資が高まる中、電気・空調・給排水・防災等の設備工事の需要が爆発的に伸びています。一方で、サブコン側は需要に対して、人手が足りずに受注を断るケースも多々あるようです。設備工事業界の人手不足に打つ手はあるのでしょうか。設備工事業界に知見を有するコンサルタントが解説します。
サブコンを取り巻く環境
サブコンの存在感が増してきている
発注元であるゼネコンと受注側であるサブコンは、以前は、殿様と家来の関係のようだと言われてきましたが、現在はそのヒエラルキー構造に変化がみられています。ゼネコンは、サブコンにそっぽを向かれると工事が立ち行かなくなる可能性があるため、下手に出ざるを得ない状況で、最近ではスーパーゼネコンでさえ、囲い込みのためにサブコンを接待でもてなしているという話も聞かれます。本来、発注者として力を持つ不動産デベロッパーでさえ、サブコンの確保には苦労しており、サブコンが決定しないために、工期が延びるケースというも発生しています。
設備工事需要は引き続き増加傾向にある
サブコンの需要は、データセンター、半導体工場、物流施設、工場の増加と共に高まり続けています。これらの施設は高度な技術と専門知識を必要とするため、そういった専門性を有する設備工事の需要の増加は特に顕著です。また、工場の設備工事はゼネコン経由ではなくメーカーから直接受注することも多いため、非常に”おいしい”仕事。近年では、TSMCによる熊本への進出、ラピダスによる北海道での工場建設など、海外マネーも日本の建設市場に流れています。それに伴い日本各地でサブコンの囲い込みが繰り広げており、これらの要因から、サブコン大手各社は軒並み増収増益を実現させております。
資料出所:日経クロステック
深刻な人手不足
日本の建設業界では現在、深刻な人手不足に直面しており、2023年の帝国データバンクによる調査によると建設業全体で正社員の人手不足を感じている企業の割合は約7割に達しています。このような状況はサブコンにおいても例外ではありません。特に、設備工事の需要が高まっている中、人材の育成は10年単位でかかるため、「仕事はあるけど、対応できる技術者がいない」という状態の会社が非常に増えています。
特に30代~40代前半という、これからの中核となる「ミドル層」が不足している会社が多く、建設業界自体の人気の低さも相まって、採用にも非常に苦戦しているという声が挙がっています。
資料出所:帝国データバンクプレスリリース
人手不足に対する打つ手
外国人技術者の活用
厚生労働省などの政府機関は、積極的な外国人労働者の受け入れを推進しています。これまでは、「技能実習生」という形で、外国人労働者の受け入れを行ってきましたが、現在は制度を刷新する動きもあり、今後も一定数の外国人技術者の来日が期待できます。特に、「高度外国人材」と呼ばれる、より専門性の高い技術を有する人材の受け入れも活発になっており、実際に建設業界でも多くの職種で外国人材の活躍が見られます。外国人材の活躍により、人手不足の緩和が期待されていますが、文化や言語の違いを克服できないケースも多々あり、外国人材への支援やサポートが今後の課題です。
未経験人材の育成
中長期的な観点では、未経験者を育成するための教育プログラムや研修を強化することが求められています。現状の人手不足も言うまでもなく課題ではありますが、中長期的にも人手不足が予想される中で、技術者を育成する仕組みづくりが必要です。まずは建設業界のネガティブなイメージを払拭するようなブランディングで若手人材を呼び込み、その上で、若手人材に長く活躍してもらえるよう、技術の継承と労働環境の改善が求められています。
ICT化の推進
建設現場のICT(情報通信技術)化により、生産性の向上と作業の効率化が進んでいます。ドローン計測やBIMなどの技術を活用することで、これまで時間をとられていた作図や事務作業を減らし、省人化が期待できます。一方で、費用対効果が懐疑的な面もあります。システムには、一定の初期投資がかかることは必須な上、それらを上手く運用していくには、外部の導入・運用コンサルタントに依頼することも必要になります。結果的に、効果の検証がなされないまま、外部のコンサルにフィーだけを払い続けているというケースも多いため、注意が必要です。
即戦力人材の中途採用
即戦力人材を中途採用することは、非常に有効な一手です。しかし、現実はそう甘くありません。多くの企業が求人を出している中、採用競争は日々激化しています。即戦力人材の採用は、特定のスキルや経験を持つ人材を直接ターゲットにし、転職を促す「ヘッドハンティング」が非常に有効です。建設業界では、同一業界で転職をした人が年間約17万人いるというデータがあります。若者・中堅を中心に有望な人材は、より良い待遇や労働環境を求め、「より大手へ、より都市部へ」という思考が強い傾向があり、せっかく自社で育てた人材が一人前になった途端、他社へ転職してしまった、なんてことも多いのではないでしょうか。
今後は、さらに人材の流動性が高くなり、企業間での採用競争が一層激化すると予想されます。待ちの姿勢ではなく、攻めの姿勢で採用ができるか、採用に対するマインドが企業の命運を分けるといっても過言ではありません。
人手不足の解消に成功した事例
「高度外国人材」を複数採用に成功し、組織体制を再構築
東京都内のある大手サブコンA社は、「技人国」のビザを有する高度外国人材として直接雇用することで、人手不足の解消に成功しました。A社では、ミャンマー、ネパール、韓国、スリランカなどの国からすでに30名以上の採用を実施。現地での日本語教育や技術研修、来日後の支援体制を強化することで外国の方が安心して日本で働ける環境を整備。日本人技術者が高齢化する中、若い外国人材が技術の継承に一役買っており、組織に対して非常に良い影響をもたらしています。ほとんどの企業が、外国人材に関心があっても、採用や定着が上手くいかないケースが多いです。一方でA社では、日本語の学習支援や社員寮の完備まで行い、外国人材のバックアップ体制を構築することで、外国人技術者の活用に成功しました。
ヘッドハンティングを活用し成功した例
中堅電気工事会社 B社の事例(本社:東京都 売上:約50億)
当社で支援したクライアント様の事例です。B社は、地場中堅の電気工事業者として、主に工場や商業施設等の非住宅の電気設備工事を行っている会社です。長年の営業努力から、顧客からの引き合いは多いものの、技術者不足により仕事を断らざるを得ない、という状況に苦心されていました。求人広告やエージェント経由では、自社が求める人材は採用できず「技術者不足は企業の存続に関わる」という危機感から、ヘッドハンティングの活用を決断されました。
実際の動きとしては、依頼を受けた翌日からすぐさま同業の電気設備工事会社の候補者をリサーチ&リストアップを開始。翌月には、一人一人の候補者に対して、ヘッドハンターがアプローチを開始いたしました。結果、依頼を受けてから2か月後には、3名の候補者との面談が実現。半年後には、近隣地域の中堅企業に勤務していた40代前半の方の採用に成功しました。
この方は、当時、積極的に転職活動をしていたわけではなかったのですが、「給料を上げたい」「もう少し休みを確保したい」といった悩みをぼんやりと抱えていました。一方で、日々の業務も多忙であることから、積極的な転職活動には踏み出せずにいました。そんなタイミングで、当社のヘッドハンターからのお声がけがあり、今後のキャリアを考えるひとつのきっかけに。最終的には、年収2割アップでのオファーの提示があり、奥様とも相談をされた上で、転職を決断されました。潜在的な転職ニーズを持つ人材へのお声がけができたことで、転職へのマインドが醸成され、ヘッドハンティングが成功した事例になります。
まとめ
日本国内の設備工事市場は、今後も、一定程度伸びていくと予想されています。特に、半導体やデータセンター等の建設投資需要はまだまだ高く、円安も相まって、海外からの投資も盛んです。建設投資需要は伸びる一方で、技術者の確保・育成は、それに到底追いついていません。少なくとも、何か手を打たなければ、サブコン業界での競争力を失っていくことは明白でしょう。
特に、中途採用に課題を抱えている設備工事会社は、ヘッドハンティングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。今後、サブコン業界での競争力を高めていくには、「いかに優秀な即戦力人材を確保するのか」が命題になってくることが間違いありません。既存サービスでの採用が、上手く機能していない会社ほど、ヘッドハンティングが人材不足解消への有効な一手となるでしょう。
LEGACY(レガシー)は、建設業界特化のヘッドハンティングサービスを展開しています。
- サブコン業界に精通したコンサルタント陣
- 長年の業界経験から構築された電気・空調・防災等の分野における技術者とのネットワーク
- サブコン業界事情を踏まえた採用支援やキャリアアドバイス
など、建設業界特化のヘッドハンティングだからこそ、ご提供できるサービスがあります。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。
※プロジェクト設計及びお見積りは無料です。