建設コンサルタント業界のヘッドハンティング【事例解説】

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浅利 光
コンサルタント
浅利 光
筑波大学体育専門学群卒業後、独立系M&A仲介会社に入社し、M&A案件のソーシング及びエグゼキューションに従事。 建設セクターを担当するチームに所属し、建設業界・建設コンサルタント業界において、事業承継や人材不足等の課題を抱える中小企業オーナーに対するコンサルティング業務を行う。 その後、東証プライム上場のM&A仲介会社を経て、株式会社レガシーに参画。建設コンサルタントや建築・土木・管・電気等の施工管理技士の有資格者の採用支援を得意とする。 北海道出身。

少子高齢化による人材不足に悩まされている日本の労働市場ですが、建設コンサルタント業界についても人手不足は深刻です。社会資本整備をリードし、国民の安全と安心を支える社会的意義の大きな職種ですが、技術の承継が課題になっています。ベテラン技術者の採用ニーズは非常に高く、採用競争は激化していることから、求人広告など従来型の採用手法で人材を集めるのは難しいと言え、新たな採用手法としてヘッドハンティングが注目されています。本記事では、建設コンサルタントのヘッドハンティングについて解説します。

建設コンサルタントとは

建設コンサルタントの業務

建設コンサルタントとはインフラ全般に関して総合的にプロデュースやアドバイスをし、クライアントをサポートする役割を担っています。土木関連業務については、国や自治体などがクライアントになることが多く、一部民間企業からの発注で業務に従事することもあります。国民の安全・安心・便利・快適な生活や経済活動は、道路、鉄道、港、空港、上・下水道、河川、ダム、公園、エネルギー供給施設、通信施設、廃棄物処理施設などのほか、公共・公益的な構造物やさまざまな制度に支えられており、これらを「社会資本」(インフラ)と呼びます。社会資本整備は、一般的には事業主体である国や地方自治体などの発注者、建設コンサルタント、建設会社の三者が中心となって進められます。日本では、「設計・施工分離の原則」に基づき、設計業務を建設コンサルタント、施工業務をゼネコン等の建設会社というように、役割分担をしています。

求められる能力

建設コンサルタントには、知識や技術的な素養はもちろんのこと、忍耐力、責任感、折衝力など総合的な人間力が求められます。

とある現役の建設コンサルタントの方が、「大規模なプロジェクトが順調に進むことはまずない」という言葉を残しています。それだけ、関係者と折衝し、意見の対立を調整して合意を得ていくなど、困難を乗り越えていかなくてはいけない場面が多くあり、それが建設コンサルタントの醍醐味でもあります。特に、発注者の要求にどれだけ応えられるかが、建設コンサルタントとしての面白さでもあり、発注者からの信頼にも繋がるといえましょう。

時代に合わせた役割の多様化

IT化の進展、自然災害の頻発、パンデミックによる生活様式の変化など、社会資本整備を取り巻く状況が大きく変わる中で、建設コンサルタントには常に最新の知識と技術を習得することが求められ、他業界と連携しながら活動領域を広げて、新たな価値を創出することが期待されています。例えば、現代の建設業界においては、建設コンサルタントがドローンを活用することが、不可欠になってきています。ドローンを使って、現場を上空から確認したり、カメラで測量したりすることで、不具合の早期発見や高所での作業を安全に行うことが可能になります。また、建設コンサルタントが、自動運転など新時代の交通システムを組み込んだ街づくりに中心的な役割を果たすことも増えてきています。大手建設コンサルタント会社の中には、自動運転技術と先進的なICTを組み合わせた国や自治体の事業をプロデュースしている会社もあります。

建設コンサルタント業界が抱える課題

高齢化と中堅層の不足

建設コンサルタント業界では、近年、高齢化が進んでいます。バブル期、建設コンサルタント業界の需要は活発であり、好景気を背景に、多くの新卒社員が入社しました。当時入社した年代の方々が、現在、50代中盤~後半に差し掛かっており、現在、最も人数の多い年齢層は50代中盤~後半となっております。一方で、バブル崩壊や民主党政権による公共投資削減などのネガティブ要因が重なり、バブル期以降は、建設コンサルタントにとっては厳しい時代に突入しました。当然、建設コンサルタント各社は、景気不安から新卒採用に消極的になりました。その年代が、現在の30代後半~40代にあたります。

つまり、主力層が高齢化している一方で、今後の主力を担う中堅層は足りない状況というわけです。技術者の育成には、10年・20年単位での時間を要することから、年齢構成の問題はすぐには解決できません。主力層となっている50代は、10年後には引退の時期に差し掛かるため、それ以降の建設コンサルタントの人材不足は一層深刻になることが予想されます。

資料出所:建設コンサルタンツ企業年金基金「建設コンサルタンツ企業年金資料」

労働時間の長さ

建設コンサルタントの仕事は、他の業界に比べて残業が多いと言われることがあります。行政から発注される公共事業が多く、これらの業務の納期が3月末に集中するため、その時期に時間外労働が著しく増える傾向があります。納期を守れない場合、公共事業のスケジュールに大きな影響を与えることから、納期厳守にコミットする必要があるのです。一方で、全体の業務量は微増している中、技術者は減っているため、一人当たりのこなすべき業務量は増加傾向にあります。非管理職については、近年、厳しい残業規制があるため、残業時間は比較的セーブされているもの、そのしわ寄せが管理職の負担となっているというケースをよく耳にします。

新卒・中途ともに採用は非常に難しい

建設コンサルタント業界では、企業規模問わず、採用に苦労している企業が増えています。

日経クロステックの調査によると、2023年4月入社の新卒採用で予定人数に達しなかった企業は40%、2022年度の中途採用では44%に上りました。この結果から、新卒よりも中途採用の方が難しい傾向があると言えます。多くの大企業が、2024年度も大量採用を予定しているため、人材獲得競争がさらに激化することが予想されます。

資料出所:日経クロステック

業務需要は増加傾向

建設コンサルタンツ協会によると、国内公共事業に関する建設コンサルタント業務の契約金額は、平成24年度から令和4年度までに約50%増加するなど業務量が増えています。今後も建設コンサルタントの需要は高いと予想されます。

高度経済成長期に整備された多くのインフラが50年以上経過し、老朽化が進んでいるため、社会全体にとって重大な問題となっています。このため、インフラの維持管理や修繕計画の策定において重要な役割を果たす建設コンサルタントの需要はますます大きくなると考えられます。また、近年、自然災害が頻発しているため、国は「国土強靭化計画」を策定し、防災に向けた取り組みを強化しています。この関連でも、建設コンサルタントの専門知識と技術力が求められています。

近年、大手建設コンサルタント会社は、自社で設計実務をこなすことは少なく、協力会社への外注割合が非常に多くなっています。それは、業務量が多い一方で、技術者が少ないため、より多くの受注を消化すべく、「技術商社」のような役割へシフトしているのです。これには「技術力低下を招く」などの否定的な意見もありますが、背景には、業務量と技術者の歪んだ需給バランスにあります。

資料出所:国土交通省 建設経済局

ヘッドハンティングのメリット

多くの企業が利用している採用手法は、「登録型転職サービス」「求人広告サービス」に分類することができますが、これらの採用手法はいわゆる「待ち」の採用手法であり、基本的には転職を検討している求職者ありきの採用手法となります。「登録型転職サービス」では、多くの会社が求職者にアプローチすることが可能ですので、採用競争が自ずと激化します。建設コンサルタントは、専門分野が細分化していることから、待ちの姿勢では、自社が求める人材とのマッチングが非常に難易度が高いです。そこで、有効なのは「ヘッドハンティング」です。ここでは、具体化なメリットを解説します。

自社を知ってもらうことができる

建設コンサルタント業界は、地域密着型から広域大手まで多くの企業があります。大手企業ならまだしも、中堅規模以下の企業は、認知されていないケースもあります。単に求人広告を出して「待つ」だけでは、目に留まることも少ないでしょう。ヘッドハンティングでは、個別でアプローチをすることから、まず、自社がどんな企業なのか知ってもらうチャンスが増えます。どんなに魅力的な企業・求人内容であっても、認知されなければ始まらないのです。

長期のリレーション構築

建設コンサルタントの業務は、プロジェクトの期間は短くても半年、長ければ数年に及びます。土木関連のプロジェクトは長期にわたることが多く、特に管理技術者・照査技術者の交代要員を準備することは難しく、なおかつ、一人で複数のプロジェクトに同時に携わるため、移籍のタイミングを見計らうのが非常に難しい業界といえます。

加えて、ほとんどの方が多忙を極めていることから、漠然と転職したいと考えていても、実際に転職活動に費やせる時間がないのです。

ヘッドハンティングでは、転職の意思が固まっていない段階でターゲット人材にアプローチし、信頼関係を築きながら最適な移籍のタイミングを探ります。初めてお会いしてから半年、場合によっては1年以上かけて接触を続け、移籍を実現させるケースもあります。優秀な人材こそ、定期的に連絡を取りながら、時間をかけて移籍交渉を進めていく必要があります。

しかし、なかなか自社の通常業務が多い中、こういった採用活動にリソースを割くのが難しい企業がほとんどでしょう。その場合は、こういったターゲット人材とのリレーション構築をヘッドハンティング会社にアウトソーシングすることで、自社の採用担当者の業務を軽減することができます。

ヘッドハンティングを活用し、採用に成功した事例

中堅建設コンサルタント会社 A社の事例

当社で支援させていただいたクライアント様の事例を紹介させていただきます。A社は、地域密着で展開している建設コンサルタントグループであり、自治体を中心に受注が好調であるものの、橋梁分野については、技術者が高齢化しており、入札参加を意図的に止めている状況でした。未経験者を育成するにも10年単位での時間を要するため、設計実務から若手の教育を担ってくれるような、橋梁分野の技術者を採用したいと考えていました。一方で、橋梁分野の技術者は、他の会社も求めている人材であり、「待ち」の姿勢では良い方に巡りあえることはありませんでした。そこで、中核となるような技術者を迎えるべく、ヘッドハンティングの導入を決定。

実際の動きとしては、同業界の橋梁技術者のリサーチを行い、クライアントと弊社で連携しながら、リストアップ。その後、一人一人の候補者に対してヘッドハンターがアプローチを行いました。結果的に、3名の候補者との採用面談が実現。各候補者とは、数か月~半年程度の期間をかけて、情報交換やすり合わせを行いました。最終的には、近隣地域の中堅企業に勤務していた、50代の技術士(鋼構造物及びコンクリート)の方の採用に成功しました。この50代の方は、当時、積極的に転職活動をしていたわけではなかったのですが、「定年後の待遇が見えない」「より会社の中心的な役割で活躍したい」などの漠然とした悩みを抱えていました。そんなタイミングで、当社のヘッドハンターからのお声がけがあり、今後のキャリアを考えるひとつのきっかけに。最終的には、年収アップも実現され、60歳意向も待遇維持が確約されるお話となり、クライアント・ターゲット、双方にとって満足していただけるようなプロジェクトとなりました。

成功のポイント

  • 転職市場には少ない、技術士(鋼構造物及びコンクリート)の有資格者のリサーチに成功し、複数の候補者との面談に成功したこと
  • 建設業界の知見豊富なヘッドハンターが担当となり、業務内容への深い理解を持ってヘッドハンティングが行われたこと
  • 企業側の採用意欲が非常に高く、コンサルタントと協働してプロジェクトを推進できたこと

ヘッドハンティングは人材不足解消への有効な一手となる

本記事では、建設コンサルタントについて解説してきました。ますます獲得競争が厳しくなっている採用市場では、「待ち」の姿勢で成果を上げることが難しくなってきています。「攻め」の採用手法であるヘッドハンティングを検討してみるのはいかがでしょうか。

  • 「若い人や未経験人材を採用しても、すぐに辞めてしまう」
  • 「自社の人材育成にかけるコストや時間がない」
  • 「仕事はいくらでもあるが、対応できる人員が足りない」

 こんな悩みを抱えている建設コンサルタント会社は、ヘッドハンティングの活用を検討する価値があります。今後、建設コンサルタント業界で生き残っていくには、「いかに優秀な技術者を確保するのか」が命題になってくることが間違いありません。既存サービスでの採用が、上手く機能していない会社ほど、ヘッドハンティングが人材不足解消への有効な一手となるでしょう。

LEGACY(レガシー)は、建設業界特化のヘッドハンティングサービスを展開しています。

  • 建設コンサルタント業界に精通したコンサルタント陣
  • 長年の業界経験から構築された技術者とのネットワーク
  • 建設コンサルタント業界事情を踏まえた採用支援やキャリアアドバイス

など、社会インフラ領域特化のヘッドハンティングだからこそ、ご提供できるサービスがあります。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。

※プロジェクト設計及びお見積りは無料です。


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